ICT機器が導入された当初、多くの学校で行われてきたのが「放課後のPC室に全教員を集めて行う一斉研修」です。しかし、日々の業務に追われる先生方から「眠い」「自分の担当教科には関係ない」「教えられても明日には忘れる」といった声が上がり、思ったような効果が上がらないケースが多発しています。
大人の学び(特に新しいテクノロジーに対する学び)は、一斉指導よりも「困った時に隣の人に聞く」というピア・ラーニング(同僚同士の学び合い)の方が、定着率が高いという研究結果が示されています。
本稿では、全体研修を最小限にし、職員室のコミュニケーションの中でITスキルが波及していく「ピア・ラーニング」を取り入れた共有会の形式(ミニ共有会等)について紹介します。
1. 一斉のICT研修における一般的な課題
- スキルの個人差の乖離: 操作スキルに差がある教員を対象に同一のマニュアルを適用することには、個別最適化の観点から無理が生じます。
- 「やらされ感」の醸成: 疲労が溜まった放課後の研修は、「教育委員会から言われたから消化する」だけの時間になりがちです。
- 「自分事」にならない: サンプルデータを使った模擬練習では、「明日の自分の授業でどう使うか」という具体的なイメージが湧きません。
2. 「GIGAティータイム」とは何か?
GIGAティータイムとは、週に1回、お茶やコーヒーを片手に「1回5分」だけ行われる、ゆるやかなITスキルのシェアタイムのことです。朝の打ち合わせの終わりの5分間や、午後の帰り学活後の数分間を利用します。
ルールと進め方
- 全員集まらなくていい: 参加は任意、あるいは「その時職員室にいる先生だけ」で始めます。立ち話程度の雰囲気を作ります。
- 1回につき「1つの小さな技」だけを紹介する:
- 例:「今日は、Googleフォームで名前を入力させる手間を省く設定だけ紹介します!」
- 例:「Windowsの『クリップボード履歴(Win+V)』が超便利なので、みんなで今やってみましょう!」
- 登壇者は「得意な先生」以外も担当する: 情報通信主任だけでなく、「最近スプレッドシートを使えるようになった中堅の先生」が「私の失敗から学んだ、ここは気をつけたほうがいいポイント」を語る方が、共感を呼びます。
3. スキルが波及する「職員室のデザイン」
共有会をきっかけに、ITスキルが広がるきっかけを作るための「環境づくり」も行われています。
- 「教えて・教えられ」の可視化: 職員室のホワイトボードに「今、Excelの〇〇について知りたい人:A教員」「〇〇の使い方なら教えられます:B教員」といったマッチング情報(スキルマップ)を掲示します。
- 世代間交流の構造化: デジタル機器の操作においては若手が「教える側」になりやすく、授業の構成力などについてはベテランが助言を行うといった双方向の交流が、働き方改革とチームビルディングに繋がるとされています。
教育ICTの活用が進んでいる事例においては、「教員同士が気軽に画面を見せ合いながら相談できる、風通しの良い職員室環境の構築」が重要視されています。
一斉研修と並行して、短時間のスキルのシェアを習慣化することが、校務DXを推進するアプローチの一つとなります。
現場での実践事例
筆者が関わった学校では、休憩時間を活用した任意参加の「ティータイム」を設け、PCのカメラ越しにAIに物体を認識させるデモなど、興味を惹く共有を週1回(5分程度)実施しました。その結果、日常的に操作方法を尋ね合う関係性が構築され、ITスキルの定着に役立ちました(※1)。
ヒント
研修を企画する立場の方へ:自治体主導で研修を行う際は、「機器の操作説明」ではなく、「自校でのGIGAティータイムのファシリテーション(場作り)のやり方」を各校の情報リーダーに教える研修へと切り替えることが有効です。
注釈・出典
※1 実施の頻度と時間について
以前の職場を含む、これまでのキャリア実績です。週1回・5分程度という頻度は、実際に運用した際の実績であり、公的な調査に基づく推奨値ではありません。学校の状況によって、続けやすい頻度は変わります。
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