小学校の新1年生については、少しずつ学校生活に慣れて、夏休み明けから徐々にタブレット活用を増やそうとする先生もいるのではないでしょうか。
しかしながら、「渡されたまま」の状態で使い続けることは、タイピングのつまずきや画面の混乱等から、学習意欲の低下や授業の進行トラブルを生む原因となると指摘されています。
たとえば、よく使うアプリを通常のランチャーから開くと4クリック(約15秒)かかりますが、画面下のシェルフに固定しておけば1クリック(約3秒)で開けます。差は約12秒。これを1日10回、授業日を年200日として計算すると、1クラスあたり年およそ6.7時間の待ち時間になります。同じ計算を教員に当てはめると、学校全体では年およそ150〜170時間です(※1)。さらに、見逃せないのはクリック数です。これが多いほど低学年はつまづきやすくなります。
- 例:3年3組のClassroomを開く:15秒(4クリック) → 3秒(1クリック)に減らせます
本稿では、児童生徒(Chromebook環境)向けに、「新学年最初の10分」で設定することが推奨される基本設定を紹介します。
はじめに:なぜ最初の設定が必要なのか
初期設定のまま使用を開始することは、操作のつまずきによる授業の停止やモチベーション低下を招きます。例えば、入力につまずいた児童に「紙のノートでの記録」を強いることは、本人の孤立や情報格差(デジタル・デバイド)を生む危険性があります。
こうしたトラブル対応は特定の人に依存しがちなため、最初の授業でまとめて設定しておくことが、授業の進行を守るうえで有効です。
ポイント
【公的根拠】入力につまずきがある児童生徒への配慮(文部科学省)
文部科学省は、キーボード入力等の基本操作に困難(つまずき)を示す児童生徒に対し、個別最適な学びと合理的配慮の観点から「音声入力等の代替手段を積極的に活用すること」を推奨しています(※2)。
第1章:ChromebookのOS基本設定(管理コンソールからの一斉設定)
これらの設定は個人の端末操作に委ねるのではなく、教育委員会や学校管理者が「Google 管理コンソール」から一括して設定することが推奨されます。
1. 紛失防止・管理のための「所有者情報(サイン)」の設定
保管庫内での取り違えや「誰の端末かわからない」というトラブルを減らすため、ロック画面(ログイン画面)に学校名や管理番号等のカスタムテキストが表示されるようにします。
- 設定箇所: Google 管理コンソール > [デバイス] > [Chrome] > [設定] > [デバイスの設定]
- 設定項目: 「ログイン画面でのカスタム テキスト」の欄に表示させたい通達事項や管理番号のフォーマットを入力します(※3)。
第2章:〜最初の10分〜児童生徒に教えるべきショートカット設定
授業の進行を最も妨げる「入力へのつまずき」と「画面へのアクセス遅延」を無くします。
1. 「マイク機能(音声入力)」の有効化とショートカット設定
文章を打つのが苦手な低学年や、特別支援を要する児童にとって、キーボード入力は学習の大きな壁になります。
- 設定: 児童が各自で「設定」アプリの「ユーザー補助機能」>「キーボードとテキスト入力」を開き、「ディクテーション機能を有効にする」をオンにします。
- 使い方: 画面右下のシェルフ(時計の横)にマイクのアイコンが表示され、これをクリックするだけで音声入力が開始できます。または、ショートカットキー「検索キー + Dキー」でもすぐに起動でき、キーボードが打てなくても思考のアウトプットができる環境を保障します(※4)。
2. アプリの「シェルフ(タスクバー)」固定によるアクセス時間の大幅削減
「Google Classroom」などの頻繁に使うツールを毎回ランチャー(メニュー)から探して開かせることは、軽視できない時間のロスを生みます。
- 時間ロスの算出データ(当サイトの試算 ※1):
- ランチャーからアプリを探して開くまでの時間(約15秒)に対し、画面下のシェルフにピン留めされたアイコンからワンクリックで開く時間(約3秒)の差分は、1回あたり約12秒の節約になります。
- 1日に10回アプリの起動・切り替えが発生するとして、12秒 × 10回 = 1日あたり約120秒(2分)です。
- 授業日を年200日として換算すると、年間およそ6.7時間になります。
- 児童生徒は同時に操作しているため、1クラスで失われる授業時間が年およそ6.7時間です。人数分を掛け算した数値(延べ時間)にするとさらに膨大になりますが、実際に失われる授業時間ではないので割愛します。
- 設定: よく使うアプリアイコンを右クリック(または二本指タップ)し、「シェルフに固定」を選択させます。
(例)Classroomのボタンを設定したい場合:Classroomを開き、ブラウザ右上の「…」をクリック > [キャスト、保存、共有] > [ショートカットを作成] > アプリ一覧にアイコンが登録されるので、アイコンをシェルフにドラッグ&ドロップすれば完了です。
頻繁に使うツールが3つ4つと増えるのであれば、さらに大幅に削減できる可能性が見えてきます。
まとめ:設定の見直しが授業時間の確保につながる
画面のアクセス速度や入力の配慮といった初期設定を確実に行うだけで、学習意欲の減退を防ぎ、「先生、動きません」「どこを開くんですか」といった問い合わせへの対応時間を減らすことができます。
新学期のスタートには、この「最初の10分での設定儀式」の導入が推奨されます。
注釈・出典
※1 削減時間の算出について(当サイトの試算)
次の条件で計算しています。
- 従来:Chromeを開く → 右上のランチャー → アプリを選ぶ = 1アプリあたり約15秒
- 改善後:シェルフからワンクリック = 約3秒
- 1回あたりの差:約12秒/頻度:1日10回
- 1人(1クラス)あたり1日:約120秒 → 授業日 年200日で約6.7時間
- 教員に当てはめた場合:小学校(教員23人)で約153時間/中学校(教員25人)で約167時間 → 本文では「およそ150〜170時間」と記載
児童生徒の人数分を掛け算していない理由:児童生徒は同時に操作しているため、30人学級で「6.7時間 × 30人」と計算しても、実際に失われる授業時間がその分だけ増えるわけではありません。実時間としては1クラスあたり年約6.7時間です。
1校あたりの教員数は、文部科学省「令和6年度学校基本調査(確定値)」の学校数と本務教員数から算出しています(小学校 425,174人 ÷ 18,822校 = 22.6人、中学校 247,426人 ÷ 9,882校 = 25.0人)。国立・公立・私立を含む全国平均ですが、学校数の98%以上が公立です。
- 出典:文部科学省「令和6年度学校基本調査(確定値)」
授業日を年200日としているのは当サイトの試算です。公的な文書で定められた値ではなく、学校の行事予定によって前後します。
- ※2 文部科学省「特別支援教育におけるICTの活用について」
- ※3 Google Workspace 管理者ヘルプ「ChromeOS デバイスのポリシーを設定する」
- ※4 Chromebook ヘルプ「Chromebook で音声を使ってテキストを入力する」
ご相談・お問い合わせ:お問い合わせフォーム(メールの場合は contact@koumulab.jp/校務改善ラボ)

