海外の学校では生成AIをどう使っている?フィンランド・スウェーデン・アメリカ・中国の活用事例

生成AIは、日本の学校でも少しずつ使われ始めています。授業案を考える、教材を作る、文章を要約する――。教員が使える場面は増えていますが、「海外の学校では、実際にどのくらい生成AIを使っているのか?」と気になる先生も多いのではないでしょうか。

今回は、教育・AI活用の動向が度々話題に上がるフィンランド、スウェーデン、アメリカ、中国について、政府・教育行政機関・自治体などが公開している情報を中心に調べました。

結論からいうと、海外でも単純に「児童生徒にChatGPTを使わせる」という方向に進んでいるわけではありません。むしろ、

  • 教員の授業準備を効率化する
  • AIを使って教材や課題を作る
  • 児童生徒にAIの回答を検証させる
  • 個人情報を入力しない仕組みを整える
  • 最終的な判断は人間が行う

といった、「どこをAIに任せ、どこを人が担うのか」を決めながら使う動きが目立ちます。

まず4カ国の特徴を簡単に比較すると、次のようになります。

国特徴教員側で目立つ活用
フィンランド安全性・AIリテラシーを重視小テスト・教材作成、学習の補助
スウェーデン教員が試しながら活用方法を共有授業計画、教材、要約、分析
アメリカ州・学区ごとに方針が異なる教材作成、個別化、形成的評価
中国国・自治体レベルで制度化授業設計、課題、分析、評価・校務の補助

目次

フィンランド|「使う前のルール整備」を重視

フィンランドでは、2025年に教育文化省とフィンランド教育庁が、教育現場におけるAI利用についての法令・推奨事項をまとめています。

特徴的なのは、単に「AIを活用しましょう」としているのではなく、学校や自治体などの教育提供者側が、導入するAIの安全性や個人情報保護を確認した上で利用するという考え方です。

AIシステムを導入する際には、データ保護、情報セキュリティ、AI法などへの適合を事前に確認し、教職員や児童生徒に必要な研修を行うことも求められています。

私が現場で見てきた実感では、2026年時点の日本では、教育機関・企業も含め、まだまだ基本的な研修や情報が十分でないまま、現場で使われてしまっている感覚があります。

エスポー市では、学校でAIを学習の補助に活用

具体的な例が、フィンランド第2の都市エスポーです。エスポー市では、教育分野でデータ保護を確認したAI機能付きのソフトウェアを利用しています。

児童生徒は、

  • 難しい概念を分かりやすく説明してもらう
  • 読み上げに対してフィードバックを受ける
  • 学習課題に取り組む

といった使い方ができます。教員側では、AIを使った多肢選択問題やクイズなどの作成も紹介されています。

先生は実際に何に使っている?|フィンランド
・小テスト・クイズの作成
・多肢選択問題の作成
・学習課題の作成
・児童生徒への説明やフィードバックの補助
・学習内容を児童生徒に合わせて分かりやすくする

ポイントは、教師の代わりにAIが授業をすることではありません。エスポー市では、「難しい言葉をもっと簡単に説明して」とAIに依頼するような、児童生徒自身の理解を助ける使い方を想定しています。

また、フィンランドの教育行政では、AIによる評価についても慎重です。AIをフィードバック作成などの補助に利用する余地はありますが、評価そのものをAIへ全面的に任せるのではなく、人間が判断を担うことが基本とされています。

こういった簡単な教材の作成などは、日本の学校現場でも徐々に増えている印象です。特に、世代のせいでしょうか、良いか悪いかは別として若手の先生方は比較的、抵抗なく取り入れる様子を見かけます(笑)

情報源|フィンランド


スウェーデン|先生の「授業準備ツール」としてかなり具体的

スウェーデンでは、教育庁(Skolverket)が学校でのAI利用についてガイダンスを公開しています。そこでは、AIを教育・学習の補助に使うことはできるものの、教師の専門性や成績評価の判断をAIで置き換えてはいけないとされています。

また、学校としてAIの技術的・倫理的リスク、プライバシー、データセキュリティなどを考える必要性も示されています。一方、実際の教員向けの案内を見ると、かなり具体的です。

ストックホルム市では教員にCopilotを提供

ストックホルム市の教育現場では、職員がMicrosoft Copilotを利用でき、教員向けサイトには具体的な活用方法も掲載されています。例えば、

  • 授業のアイデア出し
  • プロジェクト学習の設計
  • 課題・学習問題の作成
  • 個人・グループに合わせた課題調整
  • 教材内容の分析・比較
  • 授業アンケートの集計・分析

などです。

先生は実際に何に使っている?|スウェーデン
・授業案・プロジェクト案を考える
・課題や練習問題を作る
・学習内容を児童生徒に合わせて調整する
・文章を要約・整理する
・教材を作成する
・匿名化したアンケートを分析する
・授業計画を整理・構造化する

小学4年生では「人間とAIの違い」を考える授業

さらに、ストックホルム市の学校では、2026年に小学4年生が「人間とAIの違い」について考える授業を行っています。

過去の授業では、まず児童自身が歴史について文章を書き、その後AIにも同じテーマについて文章を作らせ、両者を比較しました。「AIの文章は正しいのか」「どの情報を根拠にしているのか」を考えることで、生成AIを情報リテラシーや批判的思考を学ぶ教材として使っています。

同校では教職員もAIについて継続的に研修し、毎週の会議で活用経験を共有しています。担当教員はAIを授業計画の整理や構造化に利用し、計画時間の効率化につながっていると説明しています。

つまり、「児童生徒にAIを使わせる」だけではなく、まず先生自身が使い、学校の中でノウハウを共有している点が特徴的です。

こういった「児童生徒がAIを疑う」または「AIに批判させる」ような授業は、私も何度か授業に取り入れるサポートをさせていただきました。AIの論理的な指摘に対し、あたふたする生徒、冷静に自分の意見を考え直す生徒。面白い授業になったと先生も仰ってくださいました。国語や道徳などの授業では取り入れやすいのではないでしょうか。

情報源|スウェーデン


アメリカ|一度禁止するより「安全に使う仕組み」へ

アメリカの場合、「アメリカの学校ではこうしている」と一括りにすることはできません。教育制度が分権的で、州や学区によって生成AIへの対応がかなり異なるからです。

一方、連邦政府レベルではAIの教育利用を後押しする方向が明確になっています。米国教育省は2025年、一定の条件を満たせば、既存の連邦教育予算をAIを活用した教材、個別指導、進路案内、AIリテラシー教育、教員研修などに利用できることを示しました。

ニューヨーク市は「使ってよいAI」を審査

ニューヨーク市公立学校(NYC Public Schools)の仕組みは、日本の教育委員会にも参考になります。児童生徒のデータを扱うAIツールは、ERMAというプライバシー・セキュリティ審査を受けなければなりません。

2024年12月にはAI向けの審査基準も追加され、

  • どのようなAI機能があるかを事業者が開示する
  • 児童生徒のデータをAIモデルの学習に使わせない
  • 個人情報は承認されていないAIへ入力しない
  • AIの出力を教員が確認する

といったルールが設けられています。特に明確なのが、「AIは教員の判断を助けるものであり、置き換えるものではない」という考え方です。

先生は何に使おうとしている?|アメリカ
・授業教材の作成
・個別に合わせた教材づくり
・数学・理科の授業計画作成
・形成的評価
・学習状況の分析
・児童生徒へのフィードバック案作成
・AIリテラシー教育

米国教育省の研究機関が関わる「AmplifyGAINセンター」では、K-12の数学・理科教員向けの生成AI「Colleague AI」という教育プラットフォーム(簡単に言うとGoogle ClassroomやMicrosoft Teamsなどにさまざまな教材をAIで自由に作成・管理できる機能が統合されたツールといったところでしょうか。)の研究開発も進められています。想定されているのは、授業教材の作成、形成的評価、採点・診断レポート、児童生徒ごとのフィードバックなどです。

ロサンゼルス統一学区(LAUSD)でも、教職員・児童生徒向けのAI利用ルールやAIリテラシー教材、教員研修などを整備しています。

アメリカで興味深いのは、単にツールを導入するだけでなく、「学校で使ってよいAIをどう審査するか」という仕組みそのものを作り始めていることです。

情報源|アメリカ


中国|授業・教師・学校運営までAI活用を制度として整理

中国は4カ国の中でも、AI教育と教育現場へのAI導入を国・自治体レベルで大規模に制度化していることが目立ちます。

2025年に公表された「中小学生成式人工知能使用指南(2025年版)」では、生成AIの学校利用について、児童生徒だけでなく教師の授業づくりについても具体的な活用場面が示されています。教員については、

  • 授業設計を生成する
  • 児童生徒の能力に応じた教材を作る
  • インタラクティブな授業を作る
  • 学習状況を分析する
  • 課題を作成する
  • 課題の採点を補助する
  • 個別の教材・練習問題を生成する

といった活用が示されています。

先生は何に使うことが想定されている?|中国
・授業案・授業設計の生成
・レベル別教材の作成
・練習問題・課題の作成
・課題の批改(採点・添削)の補助
・学習状況の分析
・個別学習教材の生成
・授業中の対話・学習の補助
・評価資料作成の補助

ここまで具体的に教員業務を整理している点は特徴的です。

北京では年間8時間以上のAI教育

北京市では2025年秋から、市内の小中高校で年間8時間以上のAI教育を実施する方針が始まりました。小学校ではAIを体験すること、初中(日本の中学校に相当)ではAIを学習や生活に活用すること、高校ではより実践的・応用的な活用へ進むという段階的な設計です。

さらに、「AI学習パートナー」「AI教研アシスタント」などを使った対話型学習、個別学習、学習状況分析、課題診断なども想定されています。

重要
ここでいうAI教育には、生成AI以外の人工知能・プログラミング等も含まれます。「中国では小学生全員が生成AIを自由に使っている」という意味ではないので、この点は分けて考える必要があります。

広州では1,500校以上が共通AI教育プラットフォームを利用

広州市ではAI教育プラットフォームが整備されています。2025年5月時点で利用校は1,500校を超え、登録教員は1万2,000人超、登録児童生徒は約125万6,000人とされています。

2025年末時点では、プラットフォームは1,517校をカバーしています。広州ではAI教育を一部の研究校だけの取り組みにせず、通常の教育課程へ広げる動きが進められています。

さらに2026年、中国教育部など5部門は「人工智能+教育」行動計画を公表し、中小学校でのAI教育、教員のAI活用、教育環境などをさらに推進する方針を示しています。教員のAI教育への意識の高さと、教員向けAI研修への力の入れ具合が目立ちます。

情報源|中国


4カ国を比べて分かったこと

4カ国を調べると、進め方にはかなり違いがあります。

フィンランドは、安全性や個人情報保護を確認してから導入することを重視しています。スウェーデンでは、先生自身が授業準備などに使いながら、学校内で活用方法を共有する動きが見られます。

アメリカでは、学区ごとの差が大きい一方、ニューヨーク市のように学校で使用できるAIを組織として審査する仕組みも作られています。中国では、AI教育だけでなく、授業設計・課題・学習分析など教師の仕事まで含めてAI活用を制度化する動きが進んでいます。

方法は異なりますが、共通している点もあります。「生成AIに全部任せる」のではなく、教師の判断を残した上で使っていることです。


日本の学校なら、まず「先生が使う」ところから始められる

海外の事例を見ると、日本の学校でも、最初から児童生徒全員に生成AIを使わせる必要はなさそうです。比較的始めやすいのは、先生自身の仕事です。例えば、

  • 小テストのたたき台を作る
  • 難しい文章を児童生徒向けに言い換える
  • 授業案のたたき台を作る
  • 授業の導入・終末で見せる提示資料(スライド)を作る
  • アンケートや振り返りを分析する
  • 学校だよりを他言語で作成させる
  • 数十ページあるPDF資料を要約させる

といった用途です。もちろん、児童生徒の個人情報を入力しないことや、生成された内容を教師自身が確認することなど、利用ルールは必要です。

しかし、「生成AIを授業で使わせるか、使わせないか」という二択だけで考える必要はありません。海外の事例から見えてくるのは、

  • (1) まず教員が使う
  • (2) 安全な使い方を共有する
  • (3) 授業や校務の具体的な場面に当てはめる
  • (4) 必要に応じて児童生徒の利用へ広げる

という進め方です。

GIGAスクールで一人一台のタブレットが普及し始めた2019年頃「まず使ってみる。そして判断することが大切。」という言葉をよく聞いたことを思い出します。

生成AI活用で重要なのは、新しいAIサービスを導入することそのものではありません。「学校の仕事のどこをAIで軽くできるのか」「どこは人が判断し続けるべきなのか」を整理すること。そこから始める方が、学校現場では現実的なのではないでしょうか。

あわせて読みたい:文部科学省の生成AIガイドライン、学校が押さえる3点


注釈・出典

  • 本記事は、各国政府・教育行政機関・自治体等が公開している情報をもとに、2026年8月時点の状況を整理したものです。各国・各自治体のすべての学校で同じ運用が行われていることを示すものではありません。また「AI教育」には、生成AI以外の人工知能技術・プログラミング教育等を含む場合があります。

ご相談・お問い合わせ:お問い合わせフォーム(メールの場合は contact@koumulab.jp/校務改善ラボ)

この記事は「校務改善通信」の記事です。ほかの記事もこちらから読めます。

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この記事の執筆・監修

学校現場と教育委員会の双方に関わった経験をもとに、校務改善・ICT・生成AIの実務情報を発信しています。

学校ICTの導入・運用・現場定着に約9年携わり、その前にはエンジニアとして約10年の経験があります。業務フローの整理から改善設計、実装、導入後の定着までを一続きで扱っています。

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