学校現場には、毎日何度も繰り返される「小さな無駄」があります。
ブラウザのタブを探す時間、よく使う単語を入力する時間、画面を切り替える時間。一つ一つは数秒でも、毎日繰り返せば相応の時間になります。
たとえば、朝いちばんに開くGoogleカレンダー・Outlook・Gmail・Googleチャット2つ・特定のExcelファイルの6つを、1つあたり8秒かけて手で開いているとします。これを1日3回行うと、1人あたり1日約48秒×3回。これをショートカットやバッチファイルでワンクリック化すると、待ち時間を含めても1回15秒程度で済みます。
差し引き1日約99秒、年間240日で1人あたり約6.6時間。1校あたりの教員数は小学校で約23人、中学校で約25人ですから、学校全体では年間およそ150〜160時間になります(※1)。
本稿では、「既存のWindowsパソコンやChromebookの設定を変更する」ことで、教員自身の作業時間を短縮し、疲労軽減を図るための具体的な設定を紹介します。
はじめに:教員の端末環境について
多くの学校において、教員は「校務のメインマシンとしてWindowsパソコンを使用し、教室に持ち込む用(あるいは校務支援システム以外のブラウザ作業用)としてChromebookを使用する」という環境で働いています。また、Windows上でも「Google Chromeブラウザ」を作業の主戦場としていることが大半です。
この実態に合わせ、本記事では「①Windows自体の設定」と「②ChromebookおよびChromeブラウザの設定」の2段構えで最適化を行います。
第1章:Windowsパソコンの基本設定(疲労軽減と脱マウス)
毎日のように向かい合うWindowsパソコンでは、「目と身体への負担を減らすこと」と「キーボードだけで操作を完結させる脱マウス」が効いてきます。
1. 目を守る「ダークモード」設定
明るい画面を一日中見続けると、目の負担につながります。長文や指導案を書く際の目の疲れが軽くなったという声が多い設定です。
- 設定: Windows設定 > 個人用設定 > 色 > 「モードを選ぶ」で「ダーク」を選択します。
2. ポインターサイズ・カーソル速度の最適化
「マウスカーソルを見失う」という小さなイライラを解消します。また、電子黒板に画面を映した際、子どもたちからも指示している場所が見えやすくなります。
- 設定: Windows設定 > アクセシビリティ > マウスポインターとタッチから、ポインターのサイズを少し大きくし、色を黒や赤に変更します。
3. クリップボード履歴(Win + V)の解放
コピー&ペーストを行う際、一つコピーしては画面を戻ってペーストする往復作業はもう不要です。
- 設定: 「Windowsキー + V」を押してクリップボード履歴を有効にします。過去にコピーしたテキストや画像の履歴が一覧で表示され、そこから選んで何度でも貼り付けることができるようになります。
4. 仮想デスクトップ(Win + Ctrl + D)の活用
1つの画面でWordとExcelとブラウザを開いて、ウインドウを最小化したり最大化したりして迷子になっていませんか?
- 設定: 「Windowsキー + Ctrl + D」で新しい仮想デスクトップを作成します。「画面1は成績処理用」「画面2は授業スライド作成用」と空間を完全に分けることで、思考の切り替えがスムーズになります(画面切り替えは Win + Ctrl + 左右矢印)。
5. WindowsのIME(単語登録)の徹底活用
「お世話になっております。〇年〇組担任の〇〇です。」といった定型文を手動で入力する場合、1回あたり20秒前後かかります(筆者が実際に入力して計測した目安です)。単語登録を活用すれば、数秒で入力が完了します。
- 設定: ブラウザ側の設定ではなく、Windows標準のMicrosoft IMEやGoogle日本語入力の「単語登録機能(ユーザー辞書)」を使います。「おせ」と入力すれば上記の挨拶が出るようにシステム全体で単語登録しておくことで、Chromeで文字を打つ際も入力時間が大幅に短縮されます。
第2章:Chromebookおよびブラウザ(Chrome)の設定
次に、教室で使うChromebookや、Windows上で使うChromeブラウザの作業をハックします。学校のChromebookやブラウザは管理上の理由でシステム設定が制限されていることが多いため、それぞれの環境の特性を活かすことが重要です。
1. 起動時の設定(Windowsのスタートアップ)
Chromebookは基本的に自治体の管理コンソール設定により、起動時のブラウザやお気に入り設定が制限(グレーアウト)されていることが一般的です。そのため、メイン作業環境であるWindowsパソコンの基本設定として「スタートアップ設定」を記述します。
- 設定方法: キーボードの「Win + R」を押し、「shell:startup」と入力して開いた「スタートアップ」フォルダに、Google Chromeのショートカットを配置します。さらに、出退勤や校務支援システムなど「毎日必ず使うページ(お気に入り)」のインターネットショートカットファイルも直接配置しておけば、朝PCを開いた瞬間にすべてのシステムが自動で立ち上がります。同じことはバッチファイルでも実現できます。
2. タブグループ機能
自治体の制限等でChrome自体の「起動時のページ固定化」が使えない場合の代替案として、「タブのグループ化機能」の活用が有効です。
- メリット: 国語、算数、理科、社会など、教科書会社ごとに異なるデジタル教科書のホームページや、校務用の複数のサイトを「1年1組(赤)」「校務(青)」のようにグループ化しておくことで、ワンクリックで必要なページ群を一斉に開くことができます。
- 筆者の体験談:一つひとつブックマークから開いていた先生が、タブグループ機能を使ってボタン一つで開けるようになったことで、朝の確認や授業準備の時間が数分から数十秒に短縮されたケースを何度も目の当たりにしています。
3. Chromebookの辞書登録
Windowsとは異なり、Chromebook上でも児童生徒の提出物へのコメントなど、文字入力の機会は多々あります。
- 設定: Chromebookの設定 >「詳細設定」 >「言語と入力」から、日本語入力ツールの「ユーザー辞書」を開きます。「確認済み」「再提出」など、端末上での採点や指導によく使う言葉を登録しておくことで、Chromebookでの作業も大幅に時短できます。
結論:この「チリツモ」改革がもたらす本当の効果
冒頭で示したとおり、毎日開くアプリをワンクリックにまとめるだけで、教員1人あたり年間およそ6.6時間、学校全体では年間およそ150〜160時間の作業時間が減る計算になります(※1)。ここで紹介した他の設定を合わせれば、体感できる差はさらに大きくなります。
現場での実践事例
これらの設定は、単にマニュアルを配布するだけでは全体に広がりにくい傾向が見られます。次回の職員会議の開始前など、全教員がPCを開いている5分間を活用し、「今から全員で辞書登録を1つやってみましょう」と一緒に手を動かす場を一度設けることが、設定定着の有効な手段として現場で実践されています。
注釈・出典
※1 削減時間の算出について(当サイトの試算)
実際に行った改善内容をもとに、次の条件で計算しています。
- 対象の作業:Googleカレンダー/Outlook/Gmail/Googleチャット2つ/特定のExcelファイル(計6つ)を開く
- 手作業の場合:1つあたり約8秒 × 6 = 約48秒
- ワンクリック化した場合:全部開き終わるまで約15秒
- 1回あたりの差:約33秒/頻度:1人1日3回
- 1人あたり1日:約99秒 → 年間240日で約6.6時間
- 小学校(教員23人):約152時間/中学校(教員25人):約165時間 → 本文では「およそ150〜160時間」と記載
1校あたりの教員数は、文部科学省「令和6年度学校基本調査(確定値)」の学校数と本務教員数から算出しています(小学校 425,174人 ÷ 18,822校 = 22.6人、中学校 247,426人 ÷ 9,882校 = 25.0人)。国立・公立・私立を含む全国平均ですが、学校数の98%以上が公立です。
- 出典:文部科学省「令和6年度学校基本調査(確定値)」
年間勤務日数240日は、2026年度の土日・祝日・年末年始等の休日129日を365日から差し引いた236日に近い概数として、当サイトが試算に用いている値です。公的な文書で「教員の年間勤務日数は240日」と定められているものではありません。また年次有給休暇の取得日数は考慮していません。
なお、教員の1日の所定勤務時間は7時間45分(週38時間45分)です。これは教育職員給与特別措置法および労働基準法に基づき、各自治体の条例で定められています。
- 参考:ある自治体の「学校職員の勤務時間等に関する規則」
ご相談・お問い合わせ:お問い合わせフォーム(メールの場合は contact@koumulab.jp/校務改善ラボ)

